北山杉を愛した偉人
武蔵御陵

泣きたくなるほど美しい

東京都八王子市、高尾山の麓にある、「多摩御陵」。
広大な敷地のなかに、大正天皇の多摩陵、貞明皇后の多摩東陵、そして昭和天皇の武蔵野陵、香淳皇后の武蔵野東陵があります。
この多摩御陵の参道両側にそびえ立っているのが、京都から移植された北山杉なのです。
荘厳な雰囲気が漂う見事な北山杉の並木と、白い玉砂利とのコントラストが非常に美しく、陵墓内は何とも神々しい空気に包まれています。

ブルーノタウト

大正天皇・昭和天皇と北山杉との関わりは深く、大正四年、京都御所での大正天皇即位御大礼の用材として北山丸太が626本、また昭和三年、昭和天皇の御大礼による由基、主基殿用に、黒木丸太が500本納入されています。

また昭和天皇の御即位の式典などの大きな行事に合わせ、時の実業家達が世界各国の賓客の宿舎として、 数寄屋造りの別邸を南禅寺周辺に競うように建て始めました。(代表的な建造物に「無鄰菴」、「野村碧雲荘」、「清流亭」等がある)
これが北山杉を使った数寄屋建築の全盛期を支え、北山丸太の需要を爆発的に増やすきっかけになったのではと考えられています。

山職人を父に、京都の自然の中、大切に育てられた「北山杉」

特に昭和天皇は北山杉自体にも関心がおありになったご様子で、中川にある樹齢700年と言われている台杉の見学にお越しになられたり、(今上<平成>天皇も皇太子の頃、美智子妃殿下と一緒にここを訪問されたとのこと)北山磨きや丸太の製造工程も熱心にご見学されたそうです。
木立が天に向かって真っすぐに伸びる北山杉の姿を、昭和天皇はどんな想いでご覧になられていたのでしょうか。

激動の時代の象徴であった昭和天皇。
北山杉の並木に囲まれた武蔵野陵で、静かに国民を見守っていることでしょう。