ー佐野先生自身は北山杉にはどんな可能性、どんな新しい使い方があると思いますか?
佐野:僕は北山杉で手に取れるような小物を作ってみたいと考えています。
北山杉って一見すると無機質なほどに精密な作られ方をしているけれど、触れてみると丹精を込めて作られたもの特有の滑らかさや、温かみみたいなのを感じられる。
触れてこそわかる魅力があるんです。
だから手で触れられるもの、例えばペン立てや照明器具なんかを作ってみたらもっとその魅力が伝わるんじゃないかと思います。
肌の美しさを生かすということでしょうね。
それから北山杉は、製品としてだけでなく生産地ごと知られていくといいんじゃないでしょうか。
北山杉を生産している地域って、日本の山里のたたずまいが残るとても美しいところなんです。
昔からこの場所でこうして北山杉がつくられて来たんだなぁ、なんてことを実感させてくれるようなところです。
北山杉もそうですが、あの里の景も絶対になくしてはいけない、後世に残していかなければいけないものと思います。
そしてそんな素敵な場所で作られている材として北山杉が知られれば、きっともっと愛情をもって見てくれるでしょうし、多くの色々な立場の人たちからそれぞれに、北山杉を魅力的に使っていくアイディアを提案してくれるのではないでしょうか。
ーあの場所でつくられていることに、意味があるということですね。
佐野:また、これから北山杉はどんどん海外に紹介すべきですね。北山杉ほど精密に丹誠込めて作られた木材はほかにはないので、海外の人は驚くことでしょう。
日本的な清らかさを持った素材でもありますし、きっと欧米や中国に出していけば注目されると思います。
北山杉を海外の人に知ってもらうと同時に、ぜひ海外のデザイナーに北山杉をつかったインテリアやグッズのデザインをしてもらったらいい。
海外のデザイナーは日本人とちがって、既成の概念に縛られず、感じたままでつくるので、素材の良さを最大限に引き出すものを作るんですよ。
そうして海外で北山杉の人気が高まっていけば、おのずと日本でも北山杉が再評価されるようになるでしょうし、海外で愛されて柔軟な発想で色々な使い方をされた北山杉に、国際性と日本の伝統が融合した新しい北山杉の可能性が開けていくこともあるかもしれませんね。
―今日はありがとうございました。