工業デザイナー
朝倉さん GKインダストリアルデザインの朝倉重徳さん

北山杉は空間の句読点

—今回は北山杉の家具「KITAYAMA-SUGI NATIVE」のデザインをされた、GKインダストリアルデザインの朝倉さんにお話をお伺いします。
それではよろしくお願いします。

朝倉(以下敬称略):よろしくお願いします。

—まず朝倉さんについてお伺いします。
工業デザイナーになられた経緯などを教えてください。

朝倉:大学では機械工学を専攻していましたが、デザインにも興味はありました。
そのままではいわゆるデザイナーという職業になれないので、海外のデザイン学校に留学しました。
機能性を兼ね備えた美しいものづくり、技術と芸術の融合ということに興味があってそれを自分の仕事で達成したくて、結果デザイナーの道に進みました。

—もともと北山杉についてはどんな印象をもっていましたか?

朝倉:実家の和室の床の間には北山杉の床柱が使われていて、存在自体を知ってはいたのですが、今回のプロジェクトまでは特別に意識したことはありませんでした。

「京都には北山杉という特別な杉がある。」というようなぼんやりとした印象があっただけです。
最初にプロジェクトの話を聞いたときはただ単に、「材料として加工して何ができるのか」という方向性でイメージを膨らませていたのですが、実際に北山杉がつくられている山へ足を運んで、杉をみて、生産組合の方の話を聞いてみて、京都に息づく北山杉の本当の価値だとか本質を理解したら、それは絶対にやってはいけないことだ、と思うようになりました。

それまで床の間の床柱程度の印象しかなかったのがこのプロジェクトで全く変わり、そう思うようになっていました。

—北山杉の価値、本質とはどのようなものでしたか?

朝倉:一つ目は、造形的観点からみた北山杉の美しさです。
ふしがなく丸くて、まっすぐできれいな肌を持っており、自然の木とは思えないほどの、まるで誰かが丹念に作りこんだ作品と思わせるような秩序を漂わせるきれいな杉です。

二つめは、それがどのようにして造り上げられるのかと云う目に見えない背景、物語です。
何十年にもおよぶ、たゆまぬ職人の手作業によってはじめてできる杉であること。
そして非常に印象的だったのが、クローンであるということです。
あれほど均整のとれた姿を作るには、木が持っている血統(DNA)が重要で、優れている木が枝分けして受け継がれます。
つまり、良い血統があって、それをさらに職人が手塩にかけて育てなければ造れないということです。
一朝一夕にできるものではないところにこそ希少価値があると感じました。
「ただの綺麗な木」ではなく、その綺麗な木を作るまでに職人さんの苦労であったり、何百年もの間京都で受け継がれてきた伝統だったりが、北山杉には息吹いています。