—KITAYAMA-SUGI NATIVEのデザインについてお伺いしたいと思います。
なぜこのようなデザインとしてこの家具を作られたのでしょうか?
朝倉:今回生産の現場を見学させてもらったのですが、北山杉の山の風景がとても印象に残っていたんです。
枝が落とされた細くむき出しの幹が整然と真っすぐ伸びて、上の方に少しだけ葉が残っているんですね。
もうひとつ印象に残っていたのが台杉です。
クローンであるために北山杉の台杉は樹齢数百年の大きくて太い株杉から、細く真っすぐ伸びる姿をしています。
この二つがとても印象的でそれをモチーフに使えないかと思い、さらに北山杉そのものの美しさを活かすにはと考えていく中でこのデザインが生まれました。
—KITAYAMA-SUGI NATIVEは台杉を見立てているのですね。
朝倉:そうです、台杉と山の風景です。
—そういえばこの家具は本体と屏風がありますが、屏風が山の風景で、本体が台杉というような意図ですか?
朝倉:そこまで直接的な引用はしていません。
ただ、細い幹が何本も整然と真っすぐ伸びている風景は、この家具を通じて一つの世界観として表現したかったところです。
—僕は初めて見たときに、あまり見たことがない家具だと感じました。ひとつのプロダクトとして美しいモノ、芸術作品のように感じたのですが。
朝倉:そうですね。
通常の製品開発では誰がどのように使うかを具体的に想定して、それに合わせたものづくりをしていきますが、今回は違いました。
まず北山杉の世界観を表現することを最優先にデザインをしました。
北山杉は普通の杉と違い、色々なプロダクトにあったように加工して使う材料ではないという想いがありましたから。
—デザインをする上での朝倉さんの考え方、「こだわり」のようなものがあれば教えてください。
朝倉:気をつけていることは、その製品が持つ原型を崩さない、ということでしょうか。
製作の過程で多くの人の意見や雑念で原型が崩れてしまうとコンセプトがはっきりしない中途半端な製品になってしまいますから。
—原型とは、目に見える形のことでよろしいでしょうか?
朝倉:そうです。
最終的に外形として表現される「かたち」としての原型ということで合っています。
開発では、コストや生産に関わる制約などいろいろありますが、できるだけ原型を崩さないというのは、ひとつのこだわりです。
それは結局、製品のコンセプトを明確にすることと同じです。